日本のがん医療は原病であるがんの予防や治療に対する対策が中心で、療養生活の質の維持向上についての取組みが十分でなかったことは否めません。がん患者は、手術や化学療法・放射線療法などの治療中の副作用や治療後の後遺症により様々な問題を生じ、自宅での療養生活や社会復帰に支障をきたすことが少なくありません。リハビリ、栄養管理、口腔ケア、心のケア、症状緩和、社会復帰支援などのサポーティブケアを多面的かつ包括的に実施することが、がん患者の QOL向上に重要となります。 日本ではまだサポーティブケアという概念自体が乏しいですが、世界的にはサポーティブケアに関わる多職種の医療職から構成される Multinational Association of Supportive Care in Cancer (MASCC) という国際学会があります。 MASCCのホームページでは、サポーティブケアを以下のように説明しています。

 がんサポーティブケアとは、がんの有害事象のマネジメントと治療である。これには、がんの診断から治療を経て治療後のケアまでの一連の過程を通して、身体的および精神心理的な症状や副作用のマネジメントを含む。リハビリテーション、二次性発がんの予防、サバイバーシップ、終末期ケアへの対応はサポーティブケアに不可欠である。

 
具体的には、サポーティブケアは以下の役割を担います。
がんの症状や合併症の軽減。
治療毒性の軽減や予防。
疾病と予後に関する患者とのコミュニケーションを支援。
患者が積極的な治療により、できるだけ多くの利益を受けられるように支援。
患者や家族の心理的負担感の緩和。
がんサバイバーの精神心理的および社会的な問題への支援。
 

 がんサバイバーが 500万人を超える時代を迎える今、がんの診断早期から終末期まで様々な病期におけるサポーティブケアの必要性はさらに高まっていくことが予想されます。がん医療が外来シフトしていく中で、外来診療におけるサポーティブケアの拡充、がんサバイバーの社会復帰に向けた支援、進行がん・末期がん患者の在宅ケア、そして小児がん対策もこれからの重要な課題です。

 

平成25年度サポーティブケアシンポジウム開催報告
がんサポーティブケア市民公開講座・シンポジウム
「がん医療 次のステップへ がん患者のQOLを高めるサポーティブケア」開催報告

 信州大学大学院医学系研究科がんプロフェッショナル養成基盤推進プランは、「がんサポーティブケア」をテーマとした市民公開講座・シンポジウムを11月23日信州大学松本キャンパスで開き、医療従事者・地域住民など約100名が参加した。基調講演では、慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学の辻哲也准教授が、現在の国内のがん治療は、QOL向上の取り組みは十分でないと指摘し、今後は治療だけでなく合併症の軽減、心のケア、社会復帰までのサポートなどもバランス良く行うことが大切になると訴えた。また、サポーティブケアを広める上で、チーム医療の実践の重要性に言及し、チームのシームレスな関係や多職種でカンファレンスを積極的に行い知識・技術の向上を図るべきとした。また、シンポジウムでは県内外の医師、歯科医師ら 5 氏が登壇し、緩和ケアや周期口腔管理などの取り組みを紹介した。来場者の中には、リンパ浮腫に実際苦しんでいる人がおり、北里大学病院看護部の栗田かおるさんの取り組みを熱心に聞いておられ、このような講演会をまた開いて欲しいとの要望もあった。サポーティブケアの重要性と今後の益々の全国的啓蒙活動の必要性を切に感じた1日であった。